竹内 尚「『霊枢骨度篇尺度攷』について」、『日本東洋医学雑誌』第64巻、別冊号(第64回日本東洋医学会学術総会講演要旨集)、2013年、250頁。
『霊枢骨度篇尺度攷』について
竹内 尚(竹内鍼灸院)
【緒言】
研医会図書館所蔵の抄本『霊枢骨度篇尺度攷』は、森立之の述、その子・約之の校になる、『霊枢』骨度篇の研究書である。考證医家の著作研究の一環として、この度調査を行った。
【書誌について】
全六葉。毎半葉十三行、行二十五字の朱格の原稿用箋に、約之の筆にて記される。表紙題簽に「霊枢骨度篇尺度考」、巻首に「霊枢骨度篇尺度攷」と題す。内題に続いて「元治甲子(1864)十一月十日□□写同夏月養民□助写/元治元年甲子仲夏望森立之養竹述、男森約之養真校」と記し、以下本文。行頭より『霊枢』経文を記し、低一格にて案語を記す構成を採り、全編に渉って、朱で句点を付す。
【内容について】
本書は、骨度篇の骨度に関する38経文について考證したものである。まず冒頭にて「案同身寸、以両乳間為律、…、両乳間有二説」として、九寸五分と八寸の二説を挙げるが、本書では骨度篇に従って九寸五分を取り、近人鍼灸にて用いられる八寸は取らないとする。続いて、『霊枢』の「人長七尺五寸」について、「是漢時文、故用漢尺」と述べ、「皇国今曲尺五尺七寸、而在周尺為九尺三寸七分五厘」であるとする。そして、身の丈「漢尺七尺三寸」の門人・須田忠邦(字は誠輔、号は友枝、豊前小倉の人)を、「今以此身為律」とし、その両乳間九寸五分を身体諸処に転用して、骨度篇を読むという。以下、「頭之大骨囲二尺六寸」「胸囲四尺五寸」「腰囲四尺二寸」などについて、忠邦の丈尺と較べ、その結果を、「今験同」や「今験四尺三寸」などと記している。また案語を付し、身体部位について解説し定義付けている。
【結語】
本書は、骨度篇の経文を門人の丈尺に基づき検討するという、一風変わった書である。その案語も、身体部位の簡潔な解説に止まり、多くの文献を援引する考證医家の医経研究書とは、趣を異にする。ただ、僅か六葉の小品であると雖も、森父子の研究態度の一端を伺い得る好資料であるといえよう。
※本稿を訂補したポスター版もあります。