当院の鍼灸治療について
当院の鍼灸術は、業界内では経絡治療と呼ばれる治療法に属し、そのなかでも井上式という流派に拠るものです。手法としては、ほとんど鍼を刺さずに、ツボに対して鍼を当てる「接触鍼」と、焼き切らずに熱くないお灸「知熱灸」を中心としているのが大きな特徴で、痛くなく熱くなく、ソフトで体にやさしい鍼灸法です。
ですから、他院において痛い思いをして懲りたとか、とても敏感な方、身体の大変弱っている方や乳幼児、妊娠中の方、鍼は怖くて仕方がないという方まで、安心して施術を受けることが出来ます。
よって、鍼を深く刺したり、刺しっぱなしにしたり、鍼に電気を流したり、管で鍼をぽんぽんと打ち入れる手法は行ないません。
施術は基本的に全身を目標に行ないます。
全身を目標といっても、体全体に鍼やお灸をするという意味ではありません。現在現れている症状と、全身全体との関連を考慮しながら治療を組み立てていくということであります。
これは人間の体は機械と違い、ここの部分が悪いからここだけ治せば良い、などという単純なものでないからです。
ですから、例えば腰が痛いだけなのに、腰以外にも手足やお腹に鍼をしたりするのは、腰痛の元として、例えば長年の過労から来る内臓の弱りがある為だとか、ストレスの影響で気血の巡りが低下した為だとか考えてツボを選んでいくからです。たとえ指先一本が痛いだけでも、それは身心の不調から現れたなにがしかの徴候であります。その徴候と人体の五蔵六府・経絡との関連を考察して、ただ単に局所の痛みを抑えるのではなく、体調を整えることにより身体を回復させていく、このような方針で施術を行なっております。
使用する鍼について
当院で使用する鍼には、およそ四種類のものがあります。以下にその特徴を挙げてみます。
①井上式長柄鍼
井上式長柄鍼と磁気鍼最も使用頻度の高い鍼です。太さ僅かに0.13mmのものを使用しています。これは髪の毛のような細さで、かつほとんど刺入することなく、皮膚表面のツボ刺激をメインとしていますので、痛みを感じることはありません。
この鍼は、滅菌処理したものを一回一回使い捨てています。使い回ししませんので、感染症等の心配はございません。
②磁気鍼
五十肩や寝違えなどの、上半身の関節の可動痛時に、専ら使用します。長さ1cm程度のとても短い鍼で、皮一枚程度の深さに刺入します。刺すと言っても、その深さは、皮膚を切る程度なので、無痛、もしくはチクリとしか感じません。
この鍼も、滅菌処理したものを一回一回使い捨てています。使い回ししませんので、感染症等の心配はございません。
③てい鍼
てい鍼先端の丸くなった鍼で、太さおよそ1mmほどです。先が丸いですから、もちろん刺さりません。ツボに鍼先を当てて使用します。体の弱った方や、敏感な方の気の調整などに使用します。
この鍼は刺すものではありませんので、使い捨てではありませんが、一回一回洗浄し、オートクレーブで滅菌処理を行っています。
④円皮鍼
絆創膏に極めて短い鍼(0.3mm程度)が附属しているもので、関節の可動痛時に、持続的効果を出すために貼り付けます。寝違え・五十肩やぎっくり腰などに常用します。数日間貼り続けていても特に問題はありません。
この鍼は勿論使い捨てです。
使用する灸について
当院で使用するお灸は、およそ以下の2種類です。それぞれの特徴を挙げてみます。
①知熱灸
底面1.5cmほどの円錐状にひねったお灸です。比較的良質なもぐさを用いています。点火して熱感を感じたら取り除きますので、火傷などの心配はありません。最も使用頻度の高いお灸で、腹部や背部・肩上部のツボに常用するほか、痛みの強い部位などにも用います。
②糸状灸
ゴマ粒や糸のように細く小さくひねったお灸です。最上級のもぐさを用いています。皮膚の上で焼き切るお灸ですので、ちくっとした程度の熱さを感じます。火傷の心配はまずありませんが、皮膚に若干のヤニの跡がつく場合があります(1~2日で消えます)。所謂お灸によるツボの効果を引き出すために使用します。代表的なものでは、喉が痛いときに足の親趾のツボにお灸をしたり、ものもらいのときに手の人差し指のツボに据えたりします。
鍼灸の適応症
鍼灸治療の適応症については、WHO(世界保健機関)が有効性を認めた疾患として、以下のものが挙げられています。
【神経系疾患】
神経痛・神経麻痺・痙攣・脳卒中後遺症・自律神経失調症・頭痛・めまい・不眠・神経症・ノイローゼ・ヒステリー
【運動器系疾患】
関節炎・リウマチ・頚肩腕症候群・頚椎捻挫後遺症・五十肩・腱鞘炎・腰痛・外傷の後遺症(骨折、打撲、むちうち、捻挫)
【循環器系疾患】
心臓神経症・動脈硬化症・高血圧低血圧症・動悸・息切れ
【呼吸器系疾患】
気管支炎・喘息・風邪および予防
【消化器系疾患】
胃腸病(胃炎、消化不良、胃下垂、胃酸過多、下痢、便秘)・胆嚢炎・肝機能障害・肝炎・胃十二指腸潰瘍・痔疾
【代謝内分秘系疾患】
バセドウ氏病・糖尿病・痛風・脚気・貧血
【生殖、泌尿器系疾患】
膀胱炎・尿道炎・性機能障害・尿閉・腎炎・前立腺肥大・陰萎
【婦人科系疾患】
更年期障害・乳腺炎・白帯下・生理痛・月経不順・冷え性・血の道・不妊
【耳鼻咽喉科系疾患】
中耳炎・耳鳴・難聴・メニエル氏病・鼻出血・鼻炎・ちくのう・咽喉頭炎・へんとう炎
【眼科系疾患】
眼精疲労・仮性近視・結膜炎・疲れ目・かすみ目・ものもらい
【小児科疾患】
小児神経症(夜泣き、かんむし、夜驚、消化不良、偏食、食欲不振、不眠)・小児喘息・アレルギー性湿疹・耳下腺炎・夜尿症・虚弱体質の改善
鍼灸の保険適用について
日本の健康保険制度においては、下記の6疾患が鍼灸治療の対象として、健康保険の適用が認められています。
①神経痛 ②リウマチ ③頚肩腕症候群 ④五十肩 ⑤腰痛症 ⑥頸椎捻挫後遺症